2020年8月5日 13:05
8月に入ってから西日本や東日本では晴れ間が広がり、関東甲信や東海、北陸、東北の一部などで梅雨明けが発表され、全国的に夏本番を迎えます。そこで注意してほしいのが「熱中症」です。
からだのつくりから特に注意が必要なのは高齢者や子どもですが、20~50代の大人でも油断は禁物。なぜなら、新型コロナウイルスの感染を予防するための「新しい生活様式」を実践する中で、例年と違った視点でも熱中症予防を心がける必要があるからです。そこでタニタがこのほど実施したアンケート調査「熱中症に関する意識・実態調査2020※」から30~40代の働き盛り世代の熱中症予防ポイントをまとめました。同調査からは、この世代はほかと比べて熱中症に対する知識が低く、対策が不十分になりがちである実態が浮かび上がりました。熱中症にかからないための秘策はあるのか、これを探ってみました。
※同調査は2020年6月5日~8日に全国の10代~60代の男女1000人に対してインターネットリサーチで実施しました。調査レポートは以下より参照できます。
https://www.tanita.co.jp/cms/press/pdf/2020/heatstroke_research.pdf
例年、熱中症による救急搬送件数は梅雨明け後に急増します。梅雨明け後の急激な気温の上昇に、体温調節機能がついていけないためと考えられています。人のからだが暑さに慣れるには少し時間がかかります。ただ、暑さに慣れると、発汗量や皮膚血流量の増加、汗に含まれる塩分濃度の低下、血液量の増加、心拍数の減少などができるようになり、熱中症にかかりにくくなるとされています。これを「暑熱順化」といいますが、どのくらいの人がこの暑熱順化について知っているのでしょうか。
今回の調査では、全体の7割が「知っていた」との回答を得ました。男女別では男性が66.0%、女性が74.4%と女性の方が高かったことがわかりました。一方、「知らなかった」との回答は30代男性で5割、20代男性が4割超と高く、20~30代の男性の認知度が低い傾向が見られました。
▲「暑さに慣れていないと熱中症になりやすいこと」の認知度
さらに、「夏になっても極力自宅で過ごすようにしたいと思うか」と尋ねたところ、全体の約4人に3人が「そう思う(計)」と回答。例年、ゴールデンウィーク頃に一度暑くなり、暑熱順化が起こります。1カ月近く涼しい日が続くので、多くの人はここでからだは元に戻ってしまい、梅雨明け後から、また暑熱順化していきます。今年の夏は外出せず自宅で過ごす時間が増えることで、例年と違い夏本番でも暑熱順化が進んでいないことが予想されます。もっとも、空調で管理した室内で過ごせば、熱中症にかかるリスクはぐっと低下します。反対に、外出する際はリスクが一気に高まることを意味します。今年の夏は「暑熱順化できていない」という意識を常に持ち、暑さが和らぐまで熱中症に注意して過ごしましょう。
▲夏になっても自宅で過ごそうと思う割合
新しい生活様式の中で、熱中症に関して気になることといえば、なんといってもマスクの着用による影響の有無ではないでしょうか。今回、夏でもマスクを着用するかどうか聞きいたところ、「マスクの着用を続けようと思う」との回答が全体の7割を超えました。ほとんどの年代で「そう思う」と回答しており、世代間による大きな差はなく、全世代でマスクを着用するという意識の高さが浮き彫りとなりました。
▲夏のマスクの着用意向
一方で、より過酷な「猛暑日」については、全体で60.7%がマスクを着用する考えを示しました。なかでも、40代は67.3%と、全体で最も高い結果でした。さらに、「外で運動する際」については、全体では42.4%で、年代別では30代(51.2%)と40代(50.0%)が50%を超えた一方で、10代、60代は全体を下回りました。
▲猛暑日のマスク着用意向
▲夏に外で運動する際のマスク着用意向
新しい生活様式では「適宜マスクをはずすこと」が熱中症予防のポイントの1つになっています。これを「知らなかった」と答えた割合は10代(58.4%)と20代(59.6%)の若年層が高く、年代が上がるにつれて知っている割合は上昇しました。年齢を重ねていくと熱中症になるリスクが身近に感じられるためか、しっかりと熱中症予防に関する情報を収集できていることがうかがえます。
▲「適宜マスクをはずすことが熱中症予防のポイントになっていること」の認知度
一方、体力・体調面でまだまだ自信がある30~40代は、社会的責任が増してくる世代であることなどから、「夏に運動する際でもマスクの着用をつづける」と考える、真面目で責任感が強い人が少なくないのではないでしょうか。今年は暑熱順化が進まないことが予想され、高齢でなくても熱中症リスクが高まります。屋外で人と十分な距離が取れる際には、無理せず適宜マスクを外すなどして、感染症予防と熱中症対策を同時並行で進めましょう。
「新しい生活様式」で過ごす中、外出自粛による運動不足や生活習慣の乱れなどが気になっている人はいませんか。実は肥満だと熱中症になりやすいのですが、そのことについて知っているかを聞いたところ、6割強が知らないと答えました。肥満だと熱中症になりやすい理由は、脂肪がからだの熱を逃しにくくなるためです。また、大きなからだを動かすのにエネルギーを生み出すため、多くの熱が発生します。その結果、熱中症になるリスクが高まります。体重が少し増えたからといって、すぐに熱中症になりやすくなるわけではありませんが、肥満は他の疾病にもつながるので、適正体重を維持するように心がけましょう。
▲「肥満だと熱中症になりやすいこと」の認知度
新しい生活様式には、熱中症リスクを高める要因が潜んでいます。例えば在宅ワークで仕事が早く終わったので、そのまま家飲みやオンライン飲み会へ突入し、気が付いたら朝だった。また、通勤時間はゼロだから夜は夜更かしして、朝はゆっくり…こんな生活を送る人は注意が必要です。お酒には水分が含まれますが、利尿作用があるため、脱水症状になる恐れがあります。お酒を飲んだからといって水分補給にはなりません。
二日酔いや寝坊による朝ごはんの欠食にも要注意です。食事には水分とともに塩分が含まれるため、午前中の熱中症予防には朝食を摂ることが欠かせません。たまの出勤日に、在宅ワークによる習慣で朝寝坊をして、朝食を摂らずに出社という事態にならないよう、気を付けてください。また、睡眠不足は熱中症リスクが高まるだけでなく、熱中症以外の体調不良につながります。風邪などを引けば熱中症になるリスクはさらに高まるとされています。
熱中症と他の病気との大きな違いは、熱中症は予防で100%防げることです。暑い夏を乗り切るには熱中症に対する正しい知識と、食事・運動・睡眠のバランスを整えることに尽きると言えそうです。