2020年11月25日 10:00
タニタが2018年から毎年開催している「ご当地タニタごはんコンテスト」をご存知でしょうか?
「ご当地タニタごはんコンテスト」とは、タニタが日本の食文化の継承や地域活性化などを目的に実施している郷土料理のアレンジレシピコンテスト。日本全国に点在する郷土料理にフォーカスし、地域の伝統的な調理法や調味料を生かしつつ、「タニタが考える健康的な食事の目安」に則ってアレンジしたレシピを募集し、審査・表彰しています。
郷土料理の継承とともに、新しい地域の特産品として広く認知・普及させ、地域の活性化に結び付けることを目指している本コンテスト。2018年にスタートし、今回で3回目となります。全国 5 ブロック(北海道・東北/関東・甲信越/近畿・北陸・中部/中国・四国 /九州・沖縄)で予選大会を実施し、各ブロック3チームを選出して全国大会に歩を進めるのですが、今年はコロナ禍という非常事態。開催そのものも危ぶまれましたが、予選大会を中止しすべて書類選考で選出。「新しい生活様式」に合わせた感染予防対策を実施し、11月7日の全国大の開催にこぎつけました。
地域の調理法や調味料も生かしつつ、
当日は審査員への3分間のプレゼンと、応募されたレシピをもとに服部栄養専門学校の講師の方が調理した料理実食による評価で競います。今年は新型コロナウイルス感染防止のためオンラインでの参加も可能だったことから、テレビ番組風に編集した動画プレゼンテーションや、かぶりものをして発表にのぞむ出場者など、以前にも増して個性的な発表が印象的でした。
▲今年はオンラインでのリモート出場も!
プレスルームで試食させていただいたので、全15チームのメニューをご紹介します。
「ジンギスカン」「鮭のちゃんちゃん焼き」「三平汁」をアレンジしたレシピ。おなじみのジンギスカンをなんとハワイの郷土料理ロコモコ風に。ジンギスカンの濃厚な風味を残しつつ、さっぱりいただけるから不思議です。鮭のちゃんちゃん焼きは鮭缶を使って手軽にサラダ風に。あっさりしていて食べやすくなっています。三平汁は鰊(にしん)を細かく刻むことで、塩分調整をしているそう。日常の食卓に並びそうな、ほっこりする味でした。
「はらこ飯」「しおがま汁」「ずんだ餅」をアレンジしたレシピ。「はらこ飯」は鮭の煮汁で炊いたご飯の上にいくらを乗せた、鮭の親子丼。お弁当でもおなじみのはらこ飯が酒粕を加えた豆腐クリームのドリアに! ソースの下から鮭が出てくるのがうれしい気分になるし、イクラがいいアクセントになっています。「ずんだ」というと豆の味が強いイメージがあるけれど、甘酒を使用しているからか、想像以上にあっさりしていて食べやすかったです。
「おくずかけ」「白石温麺」「ずんだもち」をアレンジしたレシピ。醤油ベースの汁物のおくずかけがなんと洋風のキッシュに! さらに、見た目がパスタのような、イタリアンをイメージして作られた温麺(うーめん)のほか、ずんだソースをディップして食べる野菜スティックといい、どれもおしゃれなカフェで出てきそう。新しいもの、流行に敏感な若い人にも食べてもらえるようにアレンジしているというのもうなずけました。
長野の郷土料理「やたら」を「ソースかつ丼」に、「すんき漬」をサラダにアレンジしたレシピ。きゅうりやナスなど、香味野菜をいっしょに細かく刻んで混ぜ合わせた「やたら」。わさびとの相性もよく、ネーミングそのまま、やたらおいしかったです。赤カブを使用した発酵漬物のすんき漬けは、サラダのドレッシングにして食べやすくなっています。どちらも意外な組み合わせが新発見でした。
「にらそば」「たまりらっきょう」「いとこ煮」をアレンジしたレシピ。にらそばはそばのかわりにそうめんを使用し、ピリ辛のごまだれ、挽肉炒めと一緒にいただきます。副菜のたまりらっきょうをタルタルソースにしたアイデアも斬新でした。たまりらっきょうのカリっとした食感や風味がまろやかなタルタルソースと合っていて、食べるソースのようでした。家でも再現できそうなレシピです。小豆とかぼちゃの「いとこ煮」のプリンもほんのり甘く、食べやすいデザートでした。
「わっぱ飯」をアレンジしたレシピ。わっぱ飯にはいかの寸胴煮を取り入れ、塩引鮭や大口れんこんを使用した、彩り豊かな一品。風味や香り、シャキシャキサクサクとした食感も楽しく食べ応えがあります。食用菊「かきのもと」を使った、紫色がアクセントの付け合わせや汁物などもバランスよく、見た目も美しい一品。「日常のなかの非日常」というコメントにぴったりだと思いました。
「丹後寿司」「いとこ煮」をアレンジしたレシピ。丹後寿司をなんとサンドイッチにしています。サバ缶を煮汁ごと使用し、臭みをとるために西京味噌をつかっているのだとか。さらに、いとこ煮をアレンジしたスープも小豆だけでなく小豆缶の汁まで使用。小豆というと甘いイメージがあるけれど、西京味噌を使用していることもあり、甘みを抑えたコクのあるスープになっています。すべてスーパーで買える食材を使用した、アイデア満載のレシピでした。
「大坂すし」をアレンジしたレシピ。宝石箱みたいな見た目の華やかさが印象的です。甘じょっぱいけつねさんはキツネの顔をあしらっているそう。箱寿司はきゅっと味が締まった酢飯と、素材の風味が絶妙。このほか菜っ葉の炊いたん、スイカのさっぱり和えとこんぶの佃煮、スイカゼリーと盛りだくさんの食べ応えのあるレシピになっています。アジのかす汁は出汁が効いていて、まろやかな風味に。なんと隠し味にスキムミルクも入っているのだとか。
「明石鯛めし」「加古川かつめし」「姫路おでん」をアレンジしたレシピ。「えっ!これが郷土料理?」と思うような、見た目はフレンチそのもの。コース料理として出てきそうです。「明石鯛のロティ 鯛めしとハーブ・煎茶のお茶漬け」は出汁が効いたお茶漬けで、上品な味わいでした。加古川かつめしは、豚肩ロースと高野豆腐でアレンジ。ハーブのスーッと鼻に抜ける感じがカツと合います。姫路おでんをアレンジしたトマトと生姜の洋風おでん仕立てには出汁に野菜やハーブのくずを再利用したサスティナブルな一品。お箸ではもちろん、ナイフとフォークでいただけそうな郷土料理という点が斬新でした。
「いりうけご飯」「ねぶとの南蛮漬け」「イタドリの甘酢漬け」をアレンジしたレシピ。いりうけご飯とは黒大豆を炒ってから炊く郷土料理。お菓子として食べられる煎り黒大豆を使って、一人分でも簡単に作れるようアレンジしています。もっちりとしたごはんと黒豆のカリっとした食感が楽しめる一品です。備後・瀬戸内を代表する小魚「ねぶと」の南蛮漬けをハンバーグ風にしたり、タデ科の植物「イタドリ」の甘酢漬けはサラダにアレンジしたりと、普段から馴染みのあるメニューに変身。どれもお弁当に入っていたらうれしくなりそうです。
「金時豆いりばらずし」「かつおの沖なます」「でこまわし」をアレンジしたレシピ。遊山箱(ゆさんばこ)という徳島に伝わるお弁当箱に入れた、美しい見た目にうっとりします。ばらずしは各地にありますが、なかでも徳島では金時豆を使うのが特徴だとか。金時豆の甘さと酢飯が絶妙にマッチしています。ゆず酢を使い香りを強め、塩や砂糖を抑えているのも特徴です。かつおの沖なますはハンバーグ風にアレンジし、あっさりした風味に。でこまわしはごうしゅういもの代わりに市販のじゃがいもを使用し手軽に。甘しょっぱい味噌と、おこげがつくくらいにカリっと焼いたじゃがいもがマッチしています。
「ふな飯」「ふんずぜんさい」をアレンジしたレシピ。ふな飯は冬になると登場する郷土料理で、ミンチ状にしたフナを冬野菜と一緒に炒め煮にし、温かいごはんにかけていただきます。なかに入っているフナつくねは、今はフナの季節ではないため、岡山で「げた」と呼ぶ舌平目を使用。げたミンチを団子にして揚げることで食べやすくアレンジされています。たくさんの野菜やうどんも入っていてボリューム満点。みんなでこのお鍋を囲む様子が目に浮かびます。ぶんずぜんざいは、ぶんず豆をかぼちゃのいとこ煮と合わせた、どこか懐かしい、ほっこりしたおふくろの味でした。
「山羊汁」「エラブチの酢味噌和え」をアレンジしたレシピ。山羊汁は名前の通り、ヤギの肉を使った郷土料理。そのため香りやクセが強いのかと思いきや、パパイヤを使い、すき焼き風に仕上げることで臭みもなく食べやすくアレンジされています。奄美大島で獲れるブダイ「エラブチ」を使った「エラブチのカルパッチョ風」は、さっぱりしたエラブチの風味と、ヨーグルトと合わせたまろやかな酢味噌でどんどん箸がすすむ味に。若い世代の人が郷土料理に興味をもってもらえるよう食べやすくした、とのこと。好き嫌いの「好き」と「すき焼き」をかけ合わせた「好き山羊」のネーミングセンスも秀逸でした。
「さつますもじ」「茶節」をアレンジしたレシピ。鹿児島の食材を使ったちらし寿司として親しまれてきた郷土料理の「さつますもじ」を洋風春巻きにアレンジ。パリっとした皮からごはんが出てくる、サプライズ感が楽しいメニューになっています。麦みそ、お茶、かつお節を使って作る茶節はグラタン風にして食べやすくしています。プレゼン中の「郷土料理はいわば絶滅危惧種」というフレーズが非常に印象的でした。管理栄養士を目指す学生さんと先生の、ときにケンカもしながら試行錯誤を繰り返して作られたという力作レシピです。
「さつま」「あいまぜ」「あおさの粕汁」をアレンジしたレシピ。よしのみご飯は、4つの実を炊き込んで大自然に感謝をささげるための神聖な料理で「しあわせ」という意味も込められているそう。さつまは新鮮な魚の身を焼いてほぐしてつくったすり身に味噌、だし汁などを加えてのばしたもの。これをご飯にかけて食べる郷土料理ですが、手軽に魚をとるため、今回は水煮のツナ缶を使用。雑炊のようにさらさらと食べられるのが不思議でした。あえる、混ぜるが語源のあいまぜ(白和え)にはチーズを加えて洋風に。あおさの風味が口いっぱいにふんわり広がる粕汁も素朴で優しい味わいでした。
素朴なイメージのある郷土料理が、洋風やフレンチなどに大変身! 激戦の末、グランプリは「明石鯛のロティ鯛めしとハーブ・煎茶のお茶漬け 等(近畿・北陸・中部、兵庫県)」、準グランプリは「なぃすなワンプレートランチ(近畿・北陸・中部、京都府)」と「大坂のけつねさんと箱寿司 等(近畿・北陸・中部、大阪府)」に決定しました。
▲グランプリを受賞した「明石鯛のロティ鯛めしとハーブ・煎茶のお茶漬け 等(近畿・北陸・中部、兵庫県)」
「入賞された皆さん、おめでとうございます。今回はどのレシピもとてもバランスが良かったです。塩が強いといったことはなく、非常に安定していました。どのチームも優れていたのですが、とくに入賞されたお三方はプレゼンテーションがうまかった。頭巾をかぶったり…みなさんかわいらしい顔をしていました。グランプリになられた方の明石の鯛は昔から尊敬している鯛で、日本海の鯛などといろいろ食べ比べました。秋から冬にかけたもみじ鯛、さくらが咲くころのさくら鯛のどちらがおいしいかというと、さくら鯛のころはお腹に子がいて、そこに栄養がとられている。そう考えると、一番おいしい時期は今なのです。それを持ってきてくれた。一番原価がかかっているのではないでしょうか。しかし、食べていてほっとする。明石の鯛の良さが出ていました。(ご主人は)フランスでの(料理)経験や学校で教えていられるようです。それと奥様と…お二人の結実した部分が今回の料理に反映していたような気がします。素晴らしいと思いました。今回入賞を逃した方も、非常に接近していたので、ちょっと手を加えれば(入賞に)近づくと思います。今回だけでやめようと思わず、これからもぜひ挑戦してほしいと思います。皆さんが作られたものが、もしかしたら(タニタ食堂などの)メニューに入るかもしれません。さらなる飛躍をとげていただきたいと思います。コロナ禍は家庭における料理が充実すると思っています。そういう観点からも今回は見させていただきました。」
▲服部栄養専門学校 校長 服部幸應氏
どのメニューも本当に美味しかったし、何よりも参加したすべてのチームから郷土料理への熱い想いを感じました。このコンテストに応募するにあたって、地元の郷土料理を調べて食べてまた調べて…を繰り返すうちに、これまで以上に郷土料理が好きになったのかもしれません。その気持ちを煮詰めて濃くなって形になったものがこの日に集まったレシピなんだろうな。そんなことを思いながら観戦していました。次回は受賞者3組のインタビューをお届けします。
Text:難波みなみ・梅田キタ